2012年12月16日日曜日


ビッグデータ・ビジネス構築の3

 ビッグデータの台頭は、レガシーと呼ばれる従来の古いマーケティングに変革をもたらし、ビジネス創造の可能性を秘める金鉱だ。
 ビッグデータは、ソーシャル、モバイル、クラウドとと共に一気通貫コミュニケーションを支える技術によって、顧客のウォンツやニーズについて学習し、数え切れないほどの新たなビジネスチャンスをもたらすものだ。
 しかしながら、それは同時に破壊、再編の可能性をもたらすものでもある。ビッグデータを受け入れる組織が、本当に正しくデータをハンドリングすることができれば、顧客のエンゲージメントが求められるこの時代に、戦略的差別化によって新たなビジネスチャンスをつかみ取ることができる。データ分析から十分に顧客をエンゲージメントできない場合や、誤った判断がある場合、もちろん見当外れの結果を招くだけであろう。

 新しいビジネスモデルがビッグデータ領域に無数に表出してきているが、自身の研究では、これらのうち以下に挙げる3種の論点がビッグデータを扱う企業で最も重要視すべき軸であると考えている。

ビッグデータ・ビジネスの3つの創造領域
1.      「差別性」の提供
2.      情報・データの「仲介」
3.      ネットワーク構築による必要なタイミング、
必要な場所への「データ提供インフラ」


差別化: 差別性が新しい価値を生む

 ここ10年間の技術とデータがもたらした新しい価値は、「パーソナル化」と「関連性」である。
GoogleAdSenseと呼ばれる広告サービスでは、ユーザーが実際の検索キーワード、ランディングページから何を求めているのかを表示させる広告に関連させ、紐付けている。また、UPSFedEx米国郵便局では宅配荷物の配送状況が分単位で把握できるトラッキング(追跡)サービスを完備している。地図データ提供サービスでは、AppleGoogleYahoo!Microsoftを利用した位置情報データサービスを提供している。
 このように、ビッグデータは顧客満足度を向上させるため、各状況や事象をスピーディーに結び付け関連させることで、サービスを生み出し、提供している。宅配便の配送トラッキングサービスを想像してみると分かりやすいかもしれない。このサービスでは、荷物の配送途中(配送・流通センター)であれば配達先を自宅からオフィスへと変更することができるサービスだ。こうした多くのサービスが顧客満足度を向上させるために提供されている。
 また、地図をベースとしたサービスとして、ガソリンのレベルが低くなってきたらスマートフォンのアプリにアラートが出て、現在位置に近い営業中のガソリンスタンドがある場合、地図上に表示するサービスが存在する。現在地から半径16km以内にある最寄りの営業中ガソリンスタンドを見つけるだけでなく、リッターあたりの価格情報を受け取ることができるものだ。国土が広いアメリカではガソリンが切れると死活問題に関わることから、運転中にガス欠を気にしなければならないストレスから解放されるために、月数百円のこうしたアプリサービスに申し込むことは厭わないものだ。


構造化: 情報の価値を増大させるデータ加工・仲介

 BloombergExperianDun & Bradstreetのような企業では、生データを提供しており、生データの他にも、構造化されたデータを用いて企業のベンチマーク・サービスや分析、洞察といったコンサルティングも既に行っている。
 ビッグデータの世界では、これらに適合するようなシステムを構築し、追いついて行くには相当な苦労が伴うものと考えられる。よって、新たなビジネスチャンスを求める場合、ソーシャルメディア、チャット、つぶやき、動画、音声などのように、公開され、構造化されていないデータを用いたサービス用いて開発するのが手っ取り早い。
 公開されている生データ、構造化されていないデータを整理し加工することで価値のあるデータに変える市場は、今後爆発的に伸びるであろうと思われる。
 例えば、Twitterなどでコーヒーを毎日4杯飲む、左利きのトヨタ車ドライバー、ベジタリアン、昼休みに洗車と昼食を探している、といった生データがある場合、こうした情報を瞬時に整理し、紐付け、関連性を見ることで、おすすめやルートを示すといった洞察モデルを生み出すことができるようになる。
 例えば、アマゾンのような小売店では、流行の購入商品群の売上データに天気データを付加することで、需要のシグナルをピンポイントで見出せるようになる可能性がある。
 こうした生データの加工と付加価値の追加はデータを整理、加工する仲介業者が役割を担い、データを加工する過程でサービスを実施することになり、こうしたデータの中間データ加工業者が年齢、場所、興味関心などの付加価値を生データに付与して分析を行う役割を担うのが自然の流れになるであろう。
 こうしたデータの整理、加工、付加価値の付与は、「産業分野別」に分類され、「地域特性」により分類され、「消費者の役割」によっても違った分析や洞察が必要になるであろう。


インフラ構築: データ配信ネットワークの提供

 汎用性のあるデータ配信ネットワークは、収益化の基礎となるものだ。情報は、それを必要としている人の手にタイミング良く渡らなければ意味がないものとなる。場所や配信方法など、あらゆる手段を考慮に入れた上で、データの配信を確実に実施する必要がある。
 一般開放されたマーケット方式により、スポット案件をコンサルティングすることや、専門の取引所のようにクローズドな空間を用意することで機密データを扱うといった対処を行うことでデータや情報を顧客に確実に届けなければならないようなビッグデータの「インフラ」を構築するビジネスである。
 リアル市場におけるケーブルテレビのビジネスモデルと同様に、これらの情報配信ネットワークは、ケーブル経由が不可欠なサプライチェーンになるため、市場が興隆した際には収益化につながるものになるであろう。クラウドから直接エンドクライアントへデータやコンテンツを提供するなど、こうしたプラットフォームは限られた企業が提起し、投資が実現するものだ。
 現状アメリカでは、AmazonAppleBloombergGoogleMicrosoftといった大企業がこうしたプラットフォームを提供できる余地があると考えられる。
 日本では、ソフトバンクau NTTドコモなどが携帯電話キャリアとしてインフラを構築してはいるものの、音声やデータ通信といった分野に集中しており、ビッグデータ領域でのインフラ整備を大々的に推進しているような動きは見られない。よって、ビッグデータ領域で何かしらのインフラを当初から整備してしまうことで、ここに市場を占有できるチャンスがあるものと考えられる。
 こうしたインフラを独自に整備することで、ビッグデータに含まれる、機能や役割、製品所有者、場所、時間、思考や意思といった情報に至るまで、あらゆるデータを利用した広告配信ネットワーク構築が独占的にできるようになる。


 ビッグデータには、これ以外であっても、もちろん様々にマネタイズできる余地が残されている。重要なことは、これら3種のビッグデータ事業ドメインの適正可否に関わらず、自身のアイデアを保持し、具体化することである。


By秋山尊謙



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